一般に、深さ10mから100m程度の深さまでの地中温度は、地上環境の影響をあまり受けず、1年を通してほぼ一定であり、 不易層温度と呼ばれています。この不易層温度はその地域の年間平均気温よりも2℃程度高く、甲府では16℃前後となっています。この比較的低温の熱を地中熱と呼んでいます。
我々の研究ユニットでは、この低温の熱エネルギーをヒートポンプに利用することによって、優れた省エネルギー性能を持つ空調・給湯システムを開発し、これを二酸化炭素排出削減につなげ、温暖化防止対策に役立てることとしています。
地中熱は地球上の何処にでも存在し、天候に左右されない熱エネルギーであることから、日本のみならず世界の何処でも利用できることから、地球温暖化対策としての効果が期待されています。
一般に普及している冷暖房空調システムであるエアコンは、空気を熱源とした空気熱ヒートポンプです。これは冷房排熱を大気中に放出し、暖房に必要な熱を大気から奪うことで室内の冷暖房を行っています。この空気熱を地中熱に置き換えて、熱源とする空調システムが地中熱ヒートポンプです。地中熱ヒートポンプは空気熱ヒートポンプと比較して優れた省エネルギー性能を有しています。すなわち、夏の冷房では大気より温度の低い地中に熱を捨て、冬の暖房では大気より温度の高い地中から熱を奪うため、地中熱ヒートポンプ内の圧縮機等の消費電力が空気熱ヒートポンプより小さくてすむことから省エネルギー性能が優れていることになります。
現在、既に実用化されている地中熱ヒートポンプは、ヒートポンプ内の代替フロン系冷媒の凝縮・蒸発熱を室外機内に設けた冷媒/不凍液熱交換器により、一旦エチレングリコール等の不凍液に与え、この不凍液を地中に導入して、地中との間で採放熱を繰り返します。地中熱交換器では深さが約100mを基準として、採放熱に必要な本数分のボアホール内に2組のポリエチレン製U字型パイプを挿入し、間隙には珪砂を充てんし、不凍液はポリエチレンパイプ内を流れて地中と採放熱を行います。この方式は間接方式と呼ばれており、室外機出力が10kW以上となる施設への導入が一般的であり、補助金を利用した導入例も多く見られます。しかしながら、日本では欧米に比べてボアホールの掘削費用が高く、スケールメリットが得られないような室外機出力が10kWの比較的小型の家庭用に対しては、導入コストが高く普及の妨げになっています。
そこで、本研究ユニットでは、空気熱ヒートポンプの室外機内に収められている冷媒/空気熱交換器の代わりに冷媒が流れる銅管を直接地中に導入することで、冷媒の凝縮・蒸発熱を直接地中に放熱あるいは地中から採熱することで空気熱ヒートポンプよりもさらに省エネルギー性能の高い直接膨張方式地中熱ヒートポンプの研究開発を進めています。直接膨張方式の地中熱交換器は、深さを30m以内としたボアホール内に下端を閉じてカップ状にしたケーシング管を挿入して水を封入し、この中に複数本の銅管を挿入して構成します。
この直接膨張方式の優位性は,
といった点にあります。